物流業におけるIT化とAI活用、事例を参考に
2026年5月27日
『物流なんでも相談所』
岩﨑仁志
国内の物流業の労働生産性は全産業には遠く及ばない水準となっており、労働生産性の向上が急務となっています。このような中、令和3年6月に閣議決定された総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)において、 物流業の労働生産性については、2025年度までに2018年度比で2割程度向上させるとの指標を設けていました。2026年制定の新物流施策大綱でもIT化とAI活用を進める施策を展開する考えです。
物流業の労働生産性の向上に向けては物流業務のデジタル化が有効ですが、実際には電話、FAX・紙でのやりとりが主流で、デジタル化はあまり進んでいないのが実態です。国交省は物流業界におけるデジタル化の推進に向けて、物流事業者における実態調査に加え今後普及が期待 されるデジタル化ツール等について、物流事業者における実際の活用事例やその効果、普及に向けた課題等についての調査を行ってきました。この調査事業から得られた成果を業務工程別に整理し、デジタル化の導入により生産性を向上させた事例 について、導入における苦労や克服方法とともにご紹介すると共に、各事例とも、解決すべき業務課題を明確化し その解決に向けて社内で意思統一を図り推進していくことで、業務効率化を成功させていることを明らかに示しています。
国交省は物流業界におけるデジタル化の推進に向けて、物流事業者における実態調査に加え今後普及が期待されるデジタル化ツール等について、物流事業者における実際の活用事例やその効果、普及に向けた課題等についての調査を行いました。同省はこれらの調査内容をまとめ「中小物流事業者のための物流業務デジタル化の手引」を発行、普段物流事業者抱えている業務課題をイメージしながら、各事例における成功の秘訣を参考にして欲しいとしています。各事例を取り組まれている企業の情報も掲載しているで、物流業者の事業状況と近しい企業に関する事例を見つけて、参考にすることも可能です。
当該調査事業から得られた成果を業務工程別に整理し、デジタル化の導入により生産性を向上させた事例について、導入における苦労や克服方法とともにご紹介します。各事例とも、解決すべき業務課題を明確化しその解決に向けて社内で意思統一を図り推進していくことで、業務効率化を成功させています。みなさまが現在抱えておられる業務課題をイメージしながら、各事例における成功の秘訣を参考にして欲しいとしています。
調査によるとデジタル化を進めたいとしながらも、イニシャルコスト・ランニングコストに課題を感じている事業者が多いものの、自社内でのデジタル化に対する優先度 が低い、デジタル化をリードする部門が存在しない、どのシステムを選べばよいかわからない、等の知識面や体制面に 対する課題をあげる事業者も一定数存在しました。デジタル化率が高くデジタル意向が強い工程には、点呼業務や車両点検、日報作成や在庫管理等、デジタル化の 導入は自社のみで完結できる工程が目立ちました。また、請求書発行も比較的デジタル化しやすい傾向にあると考えられます。デジタル化は日々の業務改善から始めるのが効果的です。例えば労働時間に関して、人手で管理を行っていたため、人的ミス等を完全には防止できていなかった、とか改善基準告示内容が複雑で運転手の自己管理では手間が発生する上、遵守に個人差が出てしまっていたなどの課題に対して、システム管理にすることで、改善基準告示が会社レベルで 遵守できるようになった、また運行管理者から運転手に運行中にリアルタイムで指示を 出せるため、運行管理者の労働時間削減にも繋がったといった効果事例が示されています。
次に新物流施策大綱に盛り込まれている形成AI活用について簡単にふれてみます。2026年の物流AI分野では、3つの大きな変革が進んでいます。第1に、2024年4月から適用されたドライバーの時間外労働上限規制(年間960時間、拘束時間年間3,300時間)により、従来のように長時間労働で輸送能力を確保する手法が通用しなくなりました。政府の調査によると、2030年には45万人のドライバーが不足し、34%の貨物輸送に支障を来すとされています。AIによる業務効率化と自動化技術への投資が加速しています。第2に、自動運転トラックの実用化が現実的なフェーズに入っています。T2と三菱地所は2025年7月より物流施設内での自動運転トラック走行実証を開始し、国内初の「建物内走行」を実現しました。T2は2027年にレベル4幹線輸送の開始を目標としており、SGホールディングス(佐川急便グループ)との公道実証も進んでいます。新東名高速道路では2025年3月から自動運転車優先レーンの運用が始まり、AIエージェントによる車両隊列走行の制御も実証段階にあります。第3に、楽天は2024年11月からAvride社と協業し「楽天無人配送」サービスを10台体制で商用運用を開始しました。AI技術による完全自律走行を実現しており、ラストワンマイル配送の人手不足解消に直結する取り組みです。佐川急便ではSAGAWAチャット(生成AI)の導入により、再配達依頼の約65%がチャットボット経由に移行するなど、顧客接点でも生成AIの活用が進んでいます。これらの技術革新は、AIとIoTの統合によってさらなる進化が期待されています。
これからのAI活用には大きな期待が寄せられていますが、一方でAI活用を理解できていない経営者も多いのも事実です。AIの普及にはこれもIT化と同じですが、普段の業務において活用することから始めると導入も進むのではと考えます。