一年単位の変形労働時間性について
2026年4月8日
労務管理ヴィッセンシャフト vol.45
野崎 律博
◆ドライバーが一年単位の変形労働時間制を採用する意義について
早くも新年度となりました。あの寒かった日々もようやく終わりであり、桜がほころぶ季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて新年度といえば、36協定始め様々な労使協定改定の時期です。ドライバーの中で多く採用されておりますのが、一年単位の変形労働時間性と思われます。こちらは採用にあたり労使協定を締結する必要があります。年度単位で協定をされているケースが多いため、今の時期は協定改定業務に追われていることが多いと思われます。今月は一年単位変形労働時間性について、述べたいと思います。
一年単位の変形労働時間性とは、広い概念でいえば非定型的な労働時間を取り扱う制度です。非定型的な労働時間管理というと、その他思い浮かべるのはフレックスタイム等が挙げられます。
労基法において、原則として労働時間は「1日8時間、1週間40時間」と定められております。これらを超えた場合は時間外労働となり、使用者は労働者に残業代(割増賃金)を支払う義務が生じます。なお、上記の法定時間労働(1日8時間、1週間40時間)を超える労働を従業員に命じる場合、事前に36協定の締結&労基署への届出が必要であることはいうまでもありません。
運輸ドライバーのような年間月ごとに繁忙期と閑散期の差が激しい場合、より柔軟な働き方をすることができるように設計されたのが、変形労働時間制です。変形労働時間性とは、週・月・年単位で労働時間を柔軟に調整できる制度です。単位としては「1週間・1箇月・一年」それぞれを単位とした変形労働時間性があります。業務の実態によってどれを採用するかは分かれます。しかし年間を通じた業務の調整をする場合、一年単位の変形労働時間性を採用することが多いです。
一年単位の変形労働時間性とは、ひとことでいえば「1箇月を超え1年以内の一定期間において、週労働時間が平均40時間を超えない範囲で労働時間配分を調整できる」制度です。配分方法としては、例えば1日10時間労働の日がある代わりに、別の日では1日6時間労働・・・といった形で、年間平均で法定労働時間を超えないようにするためのカレンダーを作成します。もっとも簡易的方法で行われているケースで多いのは、週6日労働にする代わりに、別の週で週3~4日労働として調整する等の方法です。
◆一年単位の変形労働時間制を採用する要件と手順について
会社が1年単位の変形労働時間制を採用するにはたっては、次の5つの時効について労使協定で締結し、事業所の所在する所轄労働基準監督署に届出する必要がございます。
一つ目には、対象となる労働者の範囲です。全従業員が対象であれば、その旨協定することになります。あるいは特定の部署や職種のみ(例えばドライバーと運行管理者のみ)であれば、それら業務に従事する従業員が協定対象である旨、定めます。
二つ目には変形労働時間制の対象となる期間及び起算日の設定です。一年単位の変形労働時間制の対象となる期間は1箇月を超え1年以内に限ります。また何月何日を起算日とするかについて、協定いたします。
三つ目には特定期間の設定をする場合は、特に業務の繁忙な期間を特定期間として定めることができます。特定期間とは、特に業務が繁忙な時期について特定期間を協定しておけば、週に連続して労働させる日数の制限が緩和されます。(最大12日間/原則は最長週6日)。なお、特定期間は必ずしも設定する必要があるのではございません。必要があるときのみ、協定してください。(図表①)
四つ目には、変形労働時間制として働く労働日及び労働日ごとの労働時間について、協定します。具体的には、協定期間の業務カレンダーを作成いたします。その際、業務ごとに所定労働時間を何時間とするかについて、日ごと決定します。
五つ目には、変形労働時間制にかかる労使協定の有効期間を決定します。一年単位の変形労働時間制の場合、1年間とするケースが多いです。(年度で協定するケースが多いため、この時期はまさに協定シーズンです!)。
協定事項は上記5点についてです。これらを従業員の過半数によって組織された労働組合または労働者の過半数を代表する者と協定し、書面にまとめます。
導入時に注意すべきポイントとして、変形労働時間制は対象となる期間が長ければ長いほど、当該従業員に長時間労働が課せられる可能性が生じます。よって他の変形労働時間制(1週間単位や1箇月単位)と比べて、一年単位の変形労働時間制は、要件が厳しくなります。具体的には協定にあたり、対象期間における1日及び1週間の限度が定められております。それは1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間は52時間が限度であることです。これらは一年単位の変形労働時間制にのみ課せられた協定できる労働時間の限度となりますので、ご注意下さい。(図表②)
図表①特定期間(出典元:東京都労働局「1年単位の変形労働時間制導入の手引き」)

図表②1年単位の閉経労働時間制の労働時間の限度
(出典元:東京都労働局「1年単位の変形労働時間制導入の手引き」)
