労務管理ヴィッセンシャフト

同一労働同一賃金ガイドライン改正について

2026年5月12日

労務管理ヴィッセンシャフト vol.46
野崎 律博


◆同一労働同一賃金は非正規労働者の処遇改善に貢献してきたか?
本メルマガが出るころにはGWも明けていると思いますが、皆様は連休中にどこかに旅行など行かれましたか?私はといえば、家に引きこもって本ばかりの今日この頃です。

さて2018年短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パート有期法と略します)が法制化され、同一労働同一賃金が施行されました。法施行を大企業は2020年4月から、中小企業は翌年4月より施行され、はや5年が経過いたしました。そのような中で、昨年より労働政策審議会の中で労使の意見を踏まえつつ、改革の方向性がまとまりつつあります。

この同一労働同一賃金の目的は、正社員と非正規労働者との間の不合理な待遇差の解消を図る目的で制定されたものであり、背景には労使間の様々な労務紛争や裁判判例がベースとなっております。ことにこれら判例は物流事業者の係る事案も多く、皆様の念頭にもいくつか思い当たる事案があるのではないでしょうか?物流業に係る代表的な事案として、定年退職後再雇用された嘱託社員のドライバーが、現役時代と比べ賃金が60%以上下回ったことを巡り、職務内容が変わらず生産性低下も顕著で無い中の労働条件として適切だったか等について争われた事案などです。

同一労働同一賃金とは、正社員と非正規社員(パート、有期・無期雇用契約社員、派遣労働者)の間にある不合理な待遇差を禁止し、校正な処遇を求める制度です。法的には職務内容及び配置変更範囲が正社員と同一であれば、同じ処遇にしなければならない旨、決められております。ただし、職務内容や責任の程度、配置転換の範囲等で正社員との取扱いに違いがあれば、合理的な範囲内で待遇差をつけることは可能とされております。

かかる同一労働同一賃金について、大企業が施行した2020年4月から5年が経過したこともあり、労働政策審議会において労使の意見を交えた検証が行われてきました。

これら労働政策審議会の結果、非正規雇用労働者の処遇改善は着実に進められてきたものの、以前として賃金格差があることが判明しました。これらを受け審議会では更なる処遇改善に向け奨励、告示等の改正作業を行い、令和8年10月1日に施行・適用予定となりました。

◆ガイドライン改正の要点について
労働政策審議会の結果、今回は法改正ではなくガイドラインを改正することとなりました。具体的には3点の改正があります。

一つ目としては、従来からあった同一労働ガイドラインを更に明確化する見直しを行います。具体的には働き方改革関連法の施行後の裁判判例を踏まえ、ガイドラインの記載を見直し(記載の充実・新規追加)されることになりました。審議会の報告内容では、同一労働同一賃金ガイドラインについて、さらなる明確化を図ることとなった待遇等について、明確化の趣旨などに関する関係者の理解の促進に資する様、分かりやすいパンフレット等により周知・啓発に取り組むこと等が挙げられております。

二つ目には、労働者に対する待遇に関する説明義務の改善についてです。同一労働同一賃金の大きな目的は、不合理な処遇格差を禁止することであり、正社員との間に処遇が不合理なものであってはならない点にあります。この「不合理」というのが何をもって不合理なのか?ガイドラインの中には具体的に示されておりますが、今回はこれら待遇差の内容や理由について説明義務が課せられることとなります。従来は「(当該非正規労働者から)求めがあったとき」と条件がありましたが、改正ガイドラインではこの部分が削除されます。それにより、待遇差について契約社員等からの求めがなくとも、事業主は待遇差について理由と内容を説明する義務が生じることとなります。なぜこのような改正がされるかというと、厚生労働省の統計調査の結果、これら説明が行われた事案は少なかったため、実行制を高めるという課題が背景にあります。

三つ目には、非正規労働者の賃金について、職務内容等を公正に評価して昇給に反映する等、公正な評価に基づく決定を行うことです。処遇改善を進めるにあたっては、職務の制かの評価や教育訓練、キャリアコンサルティング、就業機会の確保及び提供を総合的に行うよう努めることなどの留意事項が明記されております。派遣事業の許可申請をされている事業者の皆様ならご存じかもしれませんが、派遣労働者における同一労働同一賃金は、原則として派遣先の労働条件と同待遇にすることが求められます。しかしながら大企業への派遣が行われる場合、派遣先の賃金と併せることは困難を要する場合があります。その場合の派遣労働者の賃金決定にあたっては、過半数組合または過半数労働者代表との労使協定を行い、職種や正社員の全国平均以上の賃金を協定により支払う、いわゆる「労使協定方式」が行われます。この労使協定方式は、派遣労働者の同一労働同一賃金を担保する手法としては一定の効果があり、最も採用事例が多い方式です。一見問題の少ない労使協定方式による賃金決定ですが、派遣先の仕事が適正に評価され、賃金に反映されているか?について、現状では懸念が持たれております。これら人事評価について、適正に賃金反映されるよう努めることを派遣元事業主に求めること、派遣先事業者は当該派遣労働者の仕事ぶりについて派遣元へ情報提供すること、そのことを通じて職務評価に協力することについて、派遣先指針の改定で明記されます。
(厚生労働省「労働政策審議会 同一労働同一賃金部会の部会報告(主なポイント)」
⇒ https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001663420.pdf

著者プロフィール

野崎律博

主任研究員

公的資格など
特定社会保険労務士
運行管理者試験(貨物)


物流事業に強い社会保険労務士です。労務管理、就業規則、賃金規定等各種規定の制定、助成金活用、職場のハラスメント対策、その他労務コンサルタントが専門です。労務のお悩み相談窓口としてご活用下さい。健保組合20年経験を生かした社会保険の活用アドバイスや健保組合加入手続きも行っております。社会保険料等にお悩みの場合もご相談下さい。

得意分野

  • 労務管理
  • 就業規則
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  • 助成金
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