旅するお荷物

統計とウソ(その2)

2026年4月30日

『旅するお荷物 vol.16』

大原 欽也

→統計とウソ(その1)

統計とウソ(その1)のA)~D)の解説です。その1をお読みのうえ、下記の続きをご覧ください。


A)人口動態
下端を0にすると、実際の数字なりのイメージとなり、減少傾向が少ないことがわかる(図表4)。
図表4:人口推移(下端を0)

変化を強調したければ、下端が0でないことがわかるようにする(図表5)。
図表5:人口推移(下端を0で「ないことを明示)

なお、半減する時期の計算は、年毎の変化数を減算していくのではなく、変化率を掛け合わせていかなくてはならない。複利の金利計算と同じ要領。更に、人口問題の要諦は、人口推移というよりは、出生率である。


B)高校の学力
例えば、A校の男子の総得点は、本来、A校の男子の個別点数の合計だが、図表6からも求められて、男子の総得点=男子の平均点(70点)×男子の人数(100人)=7000点。これに女子の総得点(2700点)を加えれば、A校の男女の総得点(9700点)となり、これを男女合計人数(130人)で割れば男女計の点数(75点)となる。

要するに、加工後の数字だけでなく、元の数字に思い至らないと、読み誤ることがある。例えば、選挙や政党の支持率調査で、ミスが起こり得る。無作為抽出(調査対象をランダムに選ぶということ)で電話調査するケースが多いようだが、調査結果をそのまま集計すると偏りが生じる。無作為に電話したとしても、平日の日中に電話に出てくれるのは、高齢者が多いからである。だから、人口の年齢分布に応じて補正しないと、あまり意味のない結果となってしまう。

更に複雑になると、一見しただけではわかりにくいものがある。本当は複数のグループなのに同じグループと見なしてしまうと、間違った傾向と判断してしまう(図表7、シンプソンのパラドックス)

図表6:高校のテストの成績(計算経過も示す)

図表7:グループ分けのミス(引用元:ウィキペディア、加工の上転載)



C) 睡眠時間と死亡率
私の推測はともかく、グラフから判断できるのは、因果関係ではなく、関係性(相関)のみ。文脈によっても、わかりやすかったり、わかりにくかったりもする。図表8は、月別のアイスクリームの消費金額とビールの販売量の関係(12月を除く)。相関が強い理由は、アイスを食べたらビールも飲みたくなってしまうからでもないし、その逆でもない、ということは、図表3と違ってすぐにわかる。両方とも気温で決まる。図表9に月別平均気温との関係を示すが、相関の強さを示すR2が両方とも図表8より大きい。

図表8:アイスクリーム vs ビール

図表9:気温 vs アイスクリーム , ビール


D) 健康診断
図表10に示すように、検査で陽性判定ということは、実は非感染者だけれど間違って陽性と判定されたケース(オレンジ)と、ちゃんと感染している人が正しく陽性と判定されたケース(赤)、の二つの部分である。

赤とオレンジの、それぞれの面積は、赤=1人×90%=90、オレンジ=99人×10=990

非感染となるのはオレンジの部分だから、その確率は、オレンジ÷(赤+オレンジ) なので、

990 ÷ (90 + 990) = 0.92 = 92%

ポイントは、非感染/感染者を別々に考えてしまうのと、非感染/感染の比が大きいということ。ちなみに、コロナ初期の時期には、非感染/感染の比が特定できなかったと思われるので、正しい感性状況を把握する作業は困難を極めたものと推察される。

図表10:感染の検査


【出典元】
・ダレル・ハフ:統計でウソをつく法
・山田剛史、村井潤一郎:よくわかる心理統計
・小島寛之:ベイズ統計学入門
・デボラ・J・ベネット:確立とデタラメの世界
・永田靖:品質管理のための統計手法
・ウィキペディア:シンプソンのパラドック
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)
・小幡績:すべての経済はバブルに通じる

著者プロフィール

大原欽也

主任研究員

職歴
古河電工株式会社
古河物流株式会社 執行役員


調達から製造、出荷まで、サプライチェーン全般に関わってきました。また、設備導入、システム開発、マテハン設計、SCM構築等、様々な角度から課題解決に取り組んできました。課題解決には、統計手法や生産管理、管理会計等の汎用的な基礎技術が必要です。基礎技術を基に物流ソリューションを提供できれば幸いです。当法人のホームページに「旅するお荷物」と題したコラムも執筆しておりますので、是非ご覧ください。

得意分野

  • サプライチェーン
  • マテハン設計
  • SCM
  • 調達
  • 生産管理
無料診断、お問い合わせフォームへ