マースクCEO 燃料高で月5億ドルの追加コスト 減速航海も検討
Daily Cargo 2026年5月11日掲載
マースクのヴィンセント・クラークCEOは7日に開催した投資家・アナリスト向け決算説明会で、コンテナ船マーケットの見通しや今後の事業方針について語った。中東情勢の悪化に伴う燃料油価格の高騰などにより、「現時点で月間5億ドルの追加コストが発生している」と明かした。こうした中で顧客への価格転嫁を進めており、「短期運賃の上昇やサーチャージなどを通じて回収できている」と説明した。今後の見通しについては、「燃料油価格の高騰は続く可能性が高く、影響を軽減するために減速運航を増やすことを計画している」と述べた。安全の確保を前提とし、状況変化を踏まえた上で紅海の一部航行再開も検討していく方針だ。
既報のとおり、マースクは7日に2026年1~3月期決算を発表した。海運事業のEBIT(利払い・税引き前損益)は赤字となったが、ロジスティクス&サービス事業やターミナル事業の成長で補った。クラークCEOは、「過去10年間にわたり実施してきたインテグレーター戦略により、マースクは多様で強靭な収益源を確保している。海運マーケットが直面する業績への影響を緩和できると考えている」と述べた。足元では中東情勢の悪化により、追加コストへの対応が課題となるが、「中東情勢の悪化に関しては、主に海運事業の影響が大きく、ロジスティクス&サービス事業とターミナル事業は今後も大きな影響を受けるとは想定していない」と説明した。
中東情勢に関しては、現時点で影響を受けている中東諸国にグループで6000人の従業員を抱えており、ペルシャ湾内に6隻の自社船・定期用船が閉じ込められている。ターミナル事業においては、バーレーンとオマーンのサラーラー港に自社ターミナル拠点を持つ。クラークCEOは、「全従業員の安全は確認している。従業員と船舶、資産の安全は最優先事項だ。安全評価に基づき、ホルムズ海峡の通航を一時停止しており、戦闘開始以降は紅海ルートへの段階的な復帰も取り止めている」と説明した。
燃料調達に関しては、「既に船舶に供給済みの燃料と、陸上貯蔵施設の在庫により、燃料供給を維持できている。現時点で当社は今後1四半期分の燃料を確保している」と説明した。一方、コスト上昇に対しては、運賃やサーチャージなどを通じた価格転嫁を進めていくほか、減速航海の推進や紅海の通航再開の検討などを進めていく考えだ。「燃料油コストの上昇は、減速運航の新たな波を引き起こすと考えている。マースクとしても検討しているが、コストメリットは非常に魅力的だ。現在の長距離航路では恐らく16~17ノット程度で航行していると思うが、14.5~15ノット程度まで落とすことは非常に経済的な取り組みだ。現在の燃料油価格を考えると、かなりプラスの効果がある。(減速航海を行う場合は)需要に対応するため、より多くの船舶が必要になる」(クラークCEO)。
紅海の通航に関しては、「現時点では護衛能力などに限りがあるため不可能」としつつも、安全確保を前提に通航を再開することも検討していく。通航可能になれば、「現在のように喜望峰を迂回するよりも、燃料消費量がはるかに少なくて済む」とし、「(一部サービスの紅海通航再開によって)確保できた船腹量を減速運航に再投入できる可能性が出てくる」と話した。
クラークCEOは現時点の需給環境について、「今年5月時点で150万TEUの供給過剰が生じていると考えている。紅海情勢の悪化に伴う喜望峰経由への迂回によって約200万TEU分の船腹量が吸収されており、(仮に紅海通航が正常化した場合)合計すると約350万TEUの供給過剰になる可能性がある」と説明する。足元ではコンテナ船の発注残が積み上がっており、来年からは新造コンテナ船の竣工が再び増加し、マーケットに対して船腹供給量の増加圧力がかかる見通しだが、「規律を守れば対応可能な規模だと考えている」と述べた。業界全体で減速航海が進めば、100万~150万TEU程度の供給量を吸収できる可能性があるとしたほか、高齢船のスクラップが進むことで需給環境の改善につながると予想した。
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