労務管理ヴィッセンシャフト

4月からの労働法関連の改正について

2024年4月10日

労務管理ヴィッセンシャフト vol.22

 

1)はじめに
いよいよ4月の新年度となりました。皆様の会社におかれましては、新卒採用の新入社員も迎え、職場に新たな空気が訪れていることと思います。今月は4月からの労働関連法改正について述べたいと思います。

運送事業者に最も重要な改正は、働き方改革によるドライバー時間外労働の上限規制の適用や、それに伴う改善基準告示の改正が挙げられます。しかしこれら話題は国際総研の講演などで再三にわたってお知らせしてきましたので、今回は別のことについて触れたいと思います。

4月からの改正については、2点あります。一つは雇入れ時の労働条件明示事項の追加について、二つ目には専門業務型裁量労働制に関する改正です。

2)労働条件明示事項の追加について

労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令1条により、労働条件の明示事項が追加されました。

改正前は、就業の場所について、雇入れ時の就業の場所を明示していればよいということでしたが、施行後は将来の就業場所の変更の範囲についても明示することとなりました。

また、就業の場所だけでなく、業務の変更の範囲も同様に明示することが義務化されました。例えば採用時の仕事は運行管理者ですが、契約期間の途中でドライバー不足による不足要員への対応としてドライバー職への人事異動の可能性があれば、それらも明記する必要があります。

上記に述べた就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲など新たな明示ルールについては、令和6年4月1日以降に締結される労働契約より適用されます。従いまして、既に雇用されている従業員に対し、改めてこれらを明示する必要はございません。ただし有期雇用労働者について、労働契約の更新により新たに労働契約が締結される際においては、追加された項目を含めた明示が必要となります。

なお、就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲については、当該労働契約の期間中における変更の範囲が対象であり、次回以降の更新時に想定される変更までをも明示が求められるものではありません。

よくご質問をいただく事項として、場所及び業務内容に変更の可能性があるが、具体的に明示することが困難であるという場合の対応です。厚生労働省パンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」によれば、就業場所及び業務に限定がない場合は、「会社の定める営業所(あるいは会社の定める業務)」などという記載でもよいと例に挙げられております。しかしながら、予見可能性の向上やトラブル防止のため、出来る限り就業場所・業務の変更の範囲を明確にする等、労使間におけるコミュニケーションや認識の共有化が重要である旨指摘されております。

また有期契約労働者にあっては、当該労働契約の更新が予定されている場合について、通算契約期間または更新回数の上限がある場合、それを明示することが追加されました。なぜこのようなことが義務化されたのかと申しますと、平成25年4月1日に改正労働契約法が施行されたため、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みにより無期労働契約に転換できる権利(いわゆる「無期雇用転換権」)が生じることとなります。かかる無期転換申込権の行使について、労働者が前向きに検討できることを目的として、明示が義務化されました。

併せて無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する際の労働契約更新時の明示事項として、無期転換申込機会及び無期転換後の労働条件を明示することも義務化されました。従いまして5年を跨ぐ労働契約の更新の際、無期転換が発生したときの賃金その他労働条件を明らかにする必要があります。

3)裁量労働制の対象業務の追加及び労使協定への記載の追加事項について

専門業務型裁量労働制の対象業務として、銀行または証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく買収に関する考案及び助言の業務(M&Aアドバイサリーに関する業務)が追加されました。専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、遂行方法及び手段、時間配分などを従業員の裁量にゆだねる業務であり、厚生労働省が規定した業種に限定されます。物流事業者に直接影響するケースは少ないかもしれませんが、昨今3PL等で幅広い業務を請け負う事業者もございますので、場合によっては該当するケースもあるかもしれません。よってご留意いただければと存じます。

専門業務型裁量労働制は一定事項を労使協定に定めた上で、所轄労働基準監督署への届出を行うことが要件とされておりますが、労使協定に定める事項について、(1)労働者本人の同意を得ること(2)同意をしなかった場合の不利益取り扱いの禁止(3)同意の撤回の手続き(4)各労働者の同意及び同意の撤回に関する記録の保存・・・以上4点が追加されました。

著者プロフィール

野崎律博

主任研究員

公的資格など
特定社会保険労務士
運行管理者試験(貨物)


物流事業に強い社会保険労務士です。労務管理、就業規則、賃金規定等各種規定の制定、助成金活用、職場のハラスメント対策、その他労務コンサルタントが専門です。労務のお悩み相談窓口としてご活用下さい。健保組合20年経験を生かした社会保険の活用アドバイスや健保組合加入手続きも行っております。社会保険料等にお悩みの場合もご相談下さい。

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