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標準運賃、乖離大だと荷主の自社化懸念 / 働き方改革、成田の航空貨物に特殊事情

TOP INTERVIEW(4)
ILRS-NEWS Vol.496

株式会社池田自動車運輸 池田社長


 まず人手の問題からお聞きしたい。以前、採用難と社員の高齢化を指摘されていたが、近況はどうか。

(池田社長)昨年20歳代が2人入り、30歳過ぎの社員も入社したが、全体的な人手不足はまだ続いている。このため、定年の65歳を超えても働く意思があって健康で体力のある人は職種を選んで嘱託で残ってもらっている。70歳代も3人いる。平均年齢は50歳を超え、今は良いが5年後はリタイヤする人も多く、このままでは立ちいかなくなる。ドライバーの採用は求人広告を出しても応募が少なく広告料を浪費するだけなので、社員に紹介料を払って募集したところ、自衛隊出身者など10人以上の採用ができ、定着性も高い。このため紹介料を手厚くするなど社員紹介制度を充実させようと思っている。

― 働き方改革の取り組み状況は。

(池田社長)有給休暇の消化は厚労省の指示に沿ってほぼ全員に5日を取ってもらうようにした。それまでは就業規則にはあるものの、冠婚葬祭以外はなかなか与えられずにいたが、今回会社から休暇取得を促したことで、社員からも仕事に合わせて5日を超えて取得する人が出てきて待遇改善につながっている。ただ、休まずに稼ぎたいという人もいて、余り強く取得を促すと、同業で規制のない会社(長時間労働で給与を増やす)に転職されかねないという懸念もある。

地域の活動としては、先日、労働局や運輸局、商工会議所、連合、荷主、トラック協会などで組織する「トラック輸送における取引環境・労働時間改善千葉県協議会」が開催された。荷主に協力してもらい取引環境や時間を改善していこうとの目的で開かれ、大手では市原のS社、佐倉のT社、中小荷主の八千代のI社から運送事業者との協力で改善策を進め、積降作業を含めた運送体制の改善が図られたとの報告があった。

千葉県では他県に無い特徴として、成田空港での航空貨物の取扱いがある。航空貨物は輸入の場合、到着・通関を待って積込し、翌朝配送するという形態が多く、積込で夜間や深夜に長時間待つのが当たり前で、空港の貨物地区は工場現場に比べ数段劣悪な環境にある。元請けとなっているフォワーダーが采配しているケースが多く、国交省には成田空港貨物地区の現況を把握して「働き方改革」にあった改善がなされるようにと申し上げた。

運賃・料金問題で、国が今春にも「標準的な運賃の告示制度」を導入するといっている。

(池田社長)国が告示する標準運賃が実勢運賃に比べ高くなり、特に2トン車がかなり乖離すると聞いている。2トン車の仕事は複数軒数の配達であったり、狭いところへの配達であったりドライバーは苦労している。心配なことは実勢運賃と乖離すると荷主が自前化する可能性が生まれる。現状では4トン以上は荷主の自前化の可能性は低いが、車両の購入価格、リース料金が安価で準中型免許証で乗れる2トン車は営業を兼ねた自前化が可能だ。

ドライバーの収入は他産業に比べ、現状年収が100万円以上低いとされている。全日本トラック協会会長もみんなが標準運賃を実現しないと改善がはかれないと言っている。これを本当に実現するには、標準運賃を下回る水準で運送事業者が仕事を請けた場合は国が「事業の認可取り消し」など厳しい処分が必要だ。そうすれば標準運賃を収受し、ドライバーの収入も底上げされて、人手確保もしやすくなり好循環が生まれる。

― 池田社長は千葉県トラック協会の副会長を務められているが、協会活動の近況をお聞きしたい。

(池田社長)千葉県トラック協会として会員は2000社をめざしてきたが、昨年末の大会で1900社くらいに増えた。4年前から安全運転を推奨する目的で、「セーフティードライバーズコンテスト千葉」を開き、設定した期間内に、無事故無違反のチーム(5人でチーム編成)、会社を表彰している。2019年コンテストに当社は20チームほど参加した。コンテストをやることによってドライバーに安全運転に努めようという機運が盛り上がってきた。

このほか千葉県トラック協会は本部のある千葉市のトラック会館に隣接した土地を取得した。トラック協会とバス協会、タクシー協会が共有していた千葉県交通会館があるのだが、老朽化し建て直す見込みもたたないため、トラック協会が土地を購入し、建物を解体して将来的には研修センター等を建設することになる。

―今年は5月に「ジャパントラックショー2020」が開催されるが、要望や期待する事があれば。

(池田社長)安全、省力、省エネ、低コストなどで、AI(人工知能)を駆使し将来に向けた機器やシステムの展示を期待したい。最近、特に関心があるのが無人運転だ。茨城県の境町で全国に先駆け、無人のコミュニティーバスを4月から運行する。町は運転手付きのコミュニティーバス運行が財政的負担になっていたが、過疎地で運転免許を返上した高齢者が多く、継続せざるを得ないなかで考えた対応だ。全国の自治体でも同じような悩みがあるだけに実現性が注目されており、トラック側でも町中の無人運行だけに関心が高い。このような情報を知ることができ、具体化した展示があれば運送業界の将来を考える上で参考になると思う。

(聞き手:葉山明彦)


株式会社池田自動車運輸
千葉県印旛郡栄町矢口神明2-3-6 

代表取締役  池田 和彦
(千葉県トラック協会副会長)

ホームページ https://www.ikeda-ik.co.jp/

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