物流業NOW!

コロナ禍の厳しさ脱し目標達成へ / オンライン活用、一段と本格化

物流業Now!(最終回)
ILRS&NEWS (Vol.535)
 

株式会社バンダイロジパル 弓野社長

 新型コロナウイルス感染の発生後、御社の取り扱う貨物量に変化はあったか。

(弓野社長)当社は売上の3分の2がグループの貨物で、中国生産の玩具類が多い。今年初めに新型コロナが中国で発生し、2月に中国の生産工場が止まったため、3月ぐらいまでは日本国内に貨物が入ってこず、非常に厳しい状況が続いた。今期に入り4月以降は生産が回復して貨物が日本に入ってくるようになったが、国内で緊急事態宣言が発令され、アミューズメント施設等が閉鎖し、出荷ができない状況が続いたため、倉庫がひっ迫した。緊急事態宣言が解除され、6月頃から徐々に出荷ができるようになった。新型コロナのマイナスの影響の反面、巣ごもり需要で通販関係や国内生産のガンダムのプラモデルなどが好調に推移した。また、「鬼滅の刃」が大ヒットしたこともありグループの貨物が好調となり、新型コロナの影響があった今期でも通期では目標を達成する見込みである。

 新型コロナが発生した後、御社はどのような対応をとったか。

(弓野社長)感染防止ではまずマスクの着用、消毒の徹底をはかった。当初、マスクや消毒液が入手しづらかったが、なんとか会社で入手し、感染リスクの高いドライバーに優先的に支給した。全従業員を対象に体温の測定を義務付け、発熱者や体調不良の者がいた場合は就労させなかった。学校が休学となり、子供の面倒をみるため休まざるをえない社員には特別休暇を付与し、その休暇は有給とする措置もとった。このほか事務所はもちろん、会議室、休憩室も含め飛沫対策のアクリル板を設置した。また、人数の多い部署は密を避けるためサテライトオフィスを借りて人数を分散した。

業務面では、本社スタッフを中心に、時差出勤を実施したほか、テレワークの環境を整備した。テレワークや時差出勤は対象者をパートナー(パート)社員まで広げ今も継続中だ。集合での会議は一時中断したが、新型コロナが落ち着いた後は人数、時間の上限を決めて開催するようにした。オンライン会議は、以前から安全衛生委員会や拠点長会議などで一部導入していたがこれを拡大した。海外の子会社役員との定期ミーティングもこれまでは年に数回は日本に帰国させて実施していたが、今はオンライン化し、倉庫をスマホで映して現地の情報を報告するなど、有効活用している。研修も社内外を問わず、オンライン化を進めている。管理職全員が参加する評価者研修もオンラインで実施した。研修メニューにはグループディスカッションも含まれていたが、オンライン上の機能を活用しグループトークなどもうまくできた。海外駐在員の教育は国内教育に比べ、遅れがちとなっていたが、今回の管理者研修は海外からも参加することができたため、今後も活用していく。出張については一時禁止していたが、今は必要性で判断している。ただ、会食は慎重に判断するよう指導している。

― 新型コロナ騒動を境に人手不足や採用事情に変化はあったか。

(弓野社長)ドライバーの応募者は増えたが、当社の求める人材に適合する人材というと厳しさは続いている。ただ、新潟で5月に新拠点を開設した際のドライバーの応募者は多く、早い段階で人数をそろえることができた。来年入社の大学新卒者はたくさんエントリーしてもらい、内定者の辞退も少なかった。新型コロナ禍での今年の採用活動は初めて2次面接までをオンラインで行い、役員面接から対面する方式をとったが、良い人材を採用できたと思っている。高卒新卒者はドライバー職として採用するが、現在4名の内定を出しており、近年ではかなり多く確保できている。

 世界的に新型コロナ禍が蔓延する中で国際事業や海外拠点の近況について伺いたい。

(弓野社長)中国は2月の生産中止から始まり、一時はかなり厳しい状況だったが、今はほぼ平常に稼働している。米国向けはガンダムのプラモデルなど輸出は増えているのだが、新型コロナの影響で、アメリカでのドライバーが不足しており、中国からアメリカ向け貨物の渋滞が発生している。そのためアジア向けのコンテナが戻ってこない状況となっており、物流が厳しい状況にある。政情が混乱する香港やタイでは、当社の物流運営は今のところ特に大きな問題は出ていない。

― 弓野社長は新型コロナ問題の真最中だった4月に社長に就任されたが、経営トップになってこの半年を振り返り思うところは。

(弓野社長)就任前からコロナ問題が巻き起こってたいへんな中で社長になったが、従業員向けに物流事業者の使命として事業を継続しなければならないというトップメッセージを発した。その後も予防は徹底しながらも「物流は止めない!届けきる」というメッセージを何回か出した。この使命を果たすため、全従業員に理解してもらい協力してもらった。その意味で感謝の気持ちは強く、7月に少ないながら全員に特別協力金を出した。

― ウイズコロナの時代がしばらく続きそうだが、今後の方針は。

(弓野社長)この1年間、いろいろな業務で、従来と違う働き方ができるのがわかった。拡大できる分野にはオンライン化をさらに広げていきたいが、一方で対面でのコミュニケーションの大切さも業務内・業務外で忘れてはいけないと思っている。当社では毎年ボウリング大会を開き、全社をあげて楽しむ催しをやってきたが、今はできなくなった。コミュニケーションをどう活発化させて、一体感を作っていくか、大きな課題だと思っている。

業績面では1~3月に相当な危機があったものの、グループの事業が好調だったこともあり、当社も回復の兆しが見えた。ただ、玩具類は波動が大きいので過剰配置に気をつけながら来期に向けやっていかねばと思っている。本来、今年度が3か年中期経営計画の最終年で、来年度から新中計に入るところであったが、新型コロナウイルスで来年の環境が不透明となったため、グループでは来年度の1年間は準備期間とし、その翌年度から新中計をスタートさせることになった。物流会社としてはやるべき方向性は大きく変わらないため、当社は4年計画として策定を進めることにした。時代の変化を大胆に取り込み、人材の活用・育成も含めより大きく充実させていくことをめざす中計を策定していきたい。

(聞き手:葉山明彦)


株式会社バンダイロジパル
東京都葛飾区東四つ木4丁目42番5号

代表取締役社長 弓野 理恵
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