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マースク サプライチェーン可視化PFを展開 関税・規制リスクを回避

Daily Cargo  2025年6月27日掲載

 

マースクは6月25日、人工知能(AI)を活用した一元的な通関・関税管理や、サプライチェーンの上流域からスクリーニングを行ってコンプライアンスリスクを回避する新たなデジタルプラットフォーム(PF)「マースクトレード&タリフスタジオ」の提供を開始すると発表した。大手顧客との包括的な試験運用を経て、6月28日から米国の輸入貨物向けに販売する。日本を含めた他の地域においても今年8月以降に本格展開する方針だ。

近年は、米国のウイグル強制労働防止法(UFLPA)やEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)、欧州森林破壊防止規則(EUDR)といったESG規制が増えており、グローバルサプライチェーンを構築する上で対応が求められている。また今年に入り、米国トランプ大統領が導入した相互関税などにより、関税を巡る混乱も発生している。マースクは関税・貿易コンサルティング(GTCC)事業を通じて、信頼性が高く、コンプライアンスリスクを回避した最適なグローバルサプライチェーンの構築を支援していく。

今回のPFは、GTCCサービスを強化するもの。AIを活用して6000以上の品目コードと2万以上のサブコードを正しく最適に分類し、適用することができる。加えて、貨物の原材料レベルに遡ってサプライチェーン全体を可視化することが可能で、通関や規制違反などに起因する輸送遅延や貨物の差し押さえ、罰金などのコンプライアンスリスクを回避することをサポートする。また、データパートナーからのリアルタイムな更新に加え、世界中に配置するマースクの約2700人の通関専門家のネットワークを活用することで、関税や規制の変更情報を適宜、PFに集約していく。

マースクによると、グローバルに事業展開する企業であっても、FTA・EPAを十分に活用できていなかったり、依然として国・港ごとに30~40社程度の現地通関事業者に依存したりするケースが多く、データの断片化やサプライチェーン全体における可視性の制限、不要な関税の支払いという問題が生じている。通関手続きの不備により、輸送遅延が発生したり、規制違反により多額の罰金などが発生したりするケースも発生しているようだ。特にUFLPAに関してはトランプ政権移行後に要件が厳格化され、貨物検査の強化が図られており、実際に物流が止まるケースも増加している。

GTCC部門のラース・カールソン・グローバルヘッドは、「過去数十年間、世界貿易は関税の引き下げと貿易障壁の少なさによる恩恵を受けてきたが、現在の貿易環境は予測不可能となっている。新たに課された関税や突然延期された関税は、多くの顧客に『関税の混乱(Tariff Chaos)』とも呼べる状況を生み出している」と説明する。今回開発したPFによって、「国境を越える貨物輸送において、グローバルサプライチェーンに透明性とコンプライアンス、俊敏性、コストの最適化をもたらすことができる。通関申告はグローバル物流において最も複雑な分野の一つだが、『マースクトレード&タリフスタジオ』を活用することで複雑さを簡素化し、顧客の競争優位性を高める」と強調した。

マースクはコンテナ物流のインテグレーターを目指しており、通関分野はサプライチェーンを支えるロジスティクス全体の重要な構成要素として捉えている。GTCCサービスや今回のPFを通じて、最適なサプライチェーンの構築を支援するとともに、保管や輸送など実際の改善行動まで一気通貫で手掛けていきたい考えだ。


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