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エアロジスティクス・グループ ステファン・ドーキンス創業者兼CEO「DX時代にこそ問われる“人の力”」

Daily Cargo  2026年2月24日掲載

 

貨物総販売代理店(GSA)/総販売サービス代理店(GSSA)の世界的大手、エアロジスティクス・グループ(ALG。本社=パリ)を1990年代に設立し、現在まで長きにわたり同社の事業を統括してきたステファン・ドーキンス創業者兼CEOがこのほど来日して本紙の取材に応じ、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を軸とする長期戦略を語った。「最後に差が出るのは人間の対応力だ」(以下、すべてドーキンス創業者兼CEO)と強調。「常に謙虚で、航空会社との関係を尊重していく。顧客にとり、単なるベンダーではなく戦略的パートナーであり続けていく。また、グループ傘下の従業員、そしてその家族を養い、将来に安心感を与え続けられるよう事業継続性を高めていきたい」と思いを語った。

ドーキンスCEOは英国出身。10代の頃から航空貨物ハンドリング業務に従事し、1994年にエアロジスティクス・グループを創立した。現在59歳。エアロジスティクス・グループでは、中核ブランドのエアロジスティクスをはじめ、世界に259社を抱えている。世界での事業規模は6億5500万ユーロ(約1214億円。航空会社売り上げを基準に算出)。

「グローバル展開において“どこでも同じ”画一的なものではなく、ローカル市場特性に合う組織づくり、新規参入を重ねてきた。向こう1~2年では、世界経済の変化、消費動向のニアショアリング、リショアリングといった生産拠点の変化、地政学的要因による航空ネットワークへの影響、環境対応を背景とした機材や燃料の選択、デジタル化によるキャパシティ活用とサービススピードの向上が、航空物流市場を左右する要因となるだろう。より機動的でデータ主導型の市場へと進化し、サービス品質の重要性が一段と高まる」と力を込める。

「関税や地政学的な対立で世界が非常にディスラプティブ(混乱)になっているが、商流は水のようなもの。どこかが塞がれれば別の道を見つける。消費が続く以上、輸送は迂回し、新たなルーティングで成立する」と見立てた。

■「価格は“入り口”」付加価値を重視

ここ数年の国際航空貨物市場について「コロナ禍による歴史的な需要急増・運賃高騰局面から平常化へ向かっている。需要は縮んだのではなく、医療、電子機器、自動車、越境eコマース(EC)などへ広がった。旅客便の回復に伴いベリーキャパシティは戻りつつあるが、“時間価値の高い”貨物にとり、貨物便は今後も不可欠な存在であり続ける」という認識を語る。

航空貨物サービスを利用する荷主、フォワーダーなど顧客マインドの変化も指摘する。「航空貨物の意思決定において、価格以外の要素が占める比重は明らかに高まっている。もはや価格はあくまで“入口”に過ぎない。いま重みを増しているのは、輸送信頼性、安定性、(高品質な)サービス、可視性だ」と見る。

高付加価値貨物の需要増が背景にある。医薬品や生鮮などは、厳格な温度管理などを伴う荷役、輸送が必要だ。また、高い定時性、スケジュール遵守、トラックや上屋、ハンドリング会社と連携した途切れない輸送品質管理、そしてデジタル追跡によるリアルタイム透明性が強く求められる。

「いま、顧客は“安いだけ”の選択肢ではなく、頼れるパートナーを求めている。必要なのは、透明性、明確なコミュニケーション、そして(考え方や行動が)課題解決型のパートナーであることだ」とする。

さらに「貨物情報可視化の重要性は過去最大に高まっている」と指摘する。特に医薬品、生鮮などでは、発地から着地までの輸送過程全てにおいて、貨物の動態情報が強く求められる。ALGでは、航空会社を代行する立場として、ハンドリング会社など関係者と調整し、フォワーダーへ必要情報を提供する役割を担うとする。

■販売代理から“市場の頭脳”へ

「この10年で、GSSAの役割は大きく変貌した。かつてのGSSAの業務は、販売が中心だったが、現在では、マーケットインテリジェンス(情報収集・分析)、キャパシティマネジメント、オペレーション調整、データ連携、コンプライアンス監督まで、役割が広がった」とする。

ALGでも、顧客航空会社の収益最適化、EC物流、サステナビリティ施策、サイバーセキュリティ、リアルタイムデータ分析などにも深く関与している。ただし「当社の役割は、それらを集約して意思決定に耐える形で航空会社へ提供し、判断を早めること」と位置づけ、価格決定権などはあくまで航空会社にある点を強調する。

「(いまのGSSAには)市場を理解し、その情報を迅速かつ的確に航空会社の営業・運航チームへフィードバックする役割が求められている。向こう2年で、ダイナミックプライシングを最大化する“スピード・トゥ・マーケット”の重要性はさらに高まるだろう」という認識を示した。

「32年の経験で言えるのは、(貨物事業の)アウトソーシングは減るどころか増えているということ」と断言する。「航空会社の統合・再編が進むほど、全社的にヘッドカウント圧力が強まる。貨物部門も例外ではなく、アウトソースはさらに進むだろう」と見る。

航空会社にとり貨物事業は多くの場合“非中核”であり、内製には人員・コストがかかる。貨物収益の構成比が小さい航空会社も多く、専門性の高い外部に委ねる合理性があるという。

ALGが世界各地での営業、顧客関係、アカウント管理、書類業務、収益会計、市場リポーティングなどを担い、航空会社はネットワーク戦略や機材、プライシング方針、安全、法令順守といった中枢に集中できる―という棲み分けができる。

「GSSAを単なるベンダーではなく、戦略パートナーと位置付ける航空会社が増えている。航空会社の貨物事業のアウトソーシングは今後も進み、国際的なネットワーク力、財務基盤、データ分析力を兼ね備えたパートナーが選ばれると確信している。どんなツールがあっても、それを読み解き、相手(フォワーダー、航空会社)の課題に落とし込むのは人だ」と強調する。

■国際展開、デジタル・付加価値充実へ

今後5年間のビジョンとして「グローバル展開の深化」「デジタルおよび付加価値サービスの拡充」を中心に据える。ALGでは早期から人材、データ、コンプライアンス、サイバーセキュリティを重視し、投資してきた。「GSSA事業の成功には、明確な重要業績評価指標(KPI)の設定とオープンなコミュニケーション、データ共有、市場変化への俊敏な対応力、品質とコンプライアンスへの継続的な投資、サイバーセキュリティ体制が必要だ」という考えのもと、技術活用や投資をいっそう進める。デジタルソリューション、eコマース(EC)物流、持続可能性、データ主導型コンサルティングといった分野を強化する。

ALGでは2019年ごろにマイクロソフト・パワー・ビジネスインテリジェンス(BI)を中心に、エクセ、PDF、ウェブサイトなど、複数ソースのデータを取り込み、経営者や営業担当者が同じ指標を見られるような仕組みを構築した。「スマホで世界中の拠点の状況を一括で見られる」という。

これにより、需要に応じたキャパシティ提案、プライシング最適化、高収益貨物の特定と新規開拓、競合ベンチマークを取ることなどが可能になった。

「3カ月前のデータで動く時代は終わる。今後は予測(predicting)へ進む」と考える。「たとえば特定荷主の特定ルートで“この曜日・この時間に出やすい貨物”をアルゴリズムで捉え、見積り提示を先回りできれば、航空会社にとっての価値は一段上がる」という見立てだ。

ただし「予測できても、最後に必要なのはサービス。予測だけで、支える現場が伴わないデジタルチャネルもある」と人的サービス品質の重要性を強調する。

「30年以上にわたる経験から、関連性(存在感)を保つのは適応力であり、レジリエンスは企業文化から生まれるということを学んだ。市場の声に耳を傾け、人材とテクノロジーに投資し、信頼に基づく長期的な関係を築き、変化に即応する。デジタル化が進む時代だからこそ、大事にすべきは“人”と“コミュニケーション”だ。当社が選ばれ続けてきた理由は、そこにある」と力を込める。従業員や顧客、そしてその家族にとり、持続可能性の高い事業モデルを目指す。

■日本は“信頼”の市場

日本市場の印象については「極めて高い水準のサービス品質、コンプライアンス、そして信頼が求められる市場だ。五本の指に入る、非常に重要市場だ」と語る。「定時性・確実性は絶対条件で、透明性と迅速な情報提供、厳格な法令遵守と書類精度、予約から引き渡しまで一貫したサービス品質が求められる市場だ」という認識を示す。

「日本では、信頼関係の構築に時間がかかるが、一度築かれれば長期的な関係につながる。成功には、オペレーション能力だけでなく、文化理解とビジネス慣習への敬意が不可欠だ。グローバルなキャパシティとローカルの精緻さを両立できるパートナーが評価される市場」との見解を示した。

■問われる「ローカル力」

ALGが一貫して重視しているのが、グローバルブランドとローカル市場での実行力の両立だ。「世界共通の戦略やデータ基盤を持つ一方で、実際のビジネスの成否は、各国・各地域でどう展開するかにかかっている。航空貨物ビジネスにおいて、商習慣や顧客の期待値は国・地域ごとに大きく異なる。“ワンサイズ・フィッツ・オール(万人向けの方法)”は通用せず、同じ航空会社、同じ路線であっても、販売手法や顧客対応はローカル市場に合わせて最適化する必要がある」という。

その市場ごとの文化や商慣習を尊重することを重要視している。グローバルで培ったノウハウやブランド力を押し付けるのではなく、各国の事情に即した形で実装することが、持続的な成長につながるという考えだ。

「このローカル展開を支える中核が“人”だ。当社は航空会社単独では十分にカバーできない地域にも現地スタッフを配置し、フォワーダーや顧客の近くで活動する体制を構築してきた。デジタル化が進む中でも、対面での関係構築や即応力は依然として重要であり、現地に根差した人材こそが競争力の源泉だ」とする。

「グローバル戦略を描くだけではなく、それを現場で確実に実行できるローカル体制を持つこと。この積み重ねこそが航空会社から選ばれ続ける理由だ」と強調した。 将来を見据えては、アジア太平洋、中東、アフリカの新興市場に成長機会を見出している。積極的な世界展開は今後も続く。


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